ブルービースト
「…っ、ごめんなさいっ!」
誰に言うでもなく謝りながら、リシアは医療品をひっ掴み洞窟を飛び出した。
他の特殊部隊の医療班の人達も同じ行動に出ていて、少女は少し安心する。
そのままリシアは戦場に向かって一直線に走っていった。
「はぁ…っはぁ…」
──…自分の周りには、たくさんの死体。
仲間とも敵ともわからない人間だったそれを跨ぎながら、ハイリアは荒い息を整えた。
血だまりが視界を支配していて、おびただしい紅色に目がチカチカする。
足の痛みに堪えながら向かってくる敵を見据え、ハイリアは自身の二本の剣を握り直した。
「……絶対…戻らなきゃ」
愛しいあの子が、待っているんだから。
そう思いながらふと敵の後ろを見れば、遠くで舞う紅に映える蒼。
こんな戦いでも敵を殺さず、気絶させるに留めている。
「……ブロードは…ほんとにシャオルさんに忠実だな」
既に生きる為にと何人か殺していたハイリアは、悲しそうにそれを眺めた。
その間にも敵は間合いを詰めてくる。
しかし青年が足を踏み出した途端、その敵は地に倒れまた紅を生み出していた。