ブルービースト
「ごめんなさい、でも僕も死にたくないんだ」


振るった剣を構え直し、呟く。


頭の中には生きてリシアの元に帰る、それしかなかった。



今までこんなことはなかったのに。



「……それだけ余裕がない、ってことだろうな」


苦笑するハイリア。


後ろで束ねた長い髪が、揺れる体に合わせて跳ねた。



そして、さてもうひと頑張りだ、と彼が足を動かそうとした、瞬間。





「…………あれ?」





生きてたりそうでなかったりする人混みの中に、ちらりと赤茶色。



まさか。


そんな、まさか──…



「………っ、リシア!」



いつの間にか足はそちらに向いていた。


ガシッと肩を掴めば、ビクリと震える彼女。



「お前、こんなところで…!何してるんだっ!!」



そう怒鳴り付ければ、まだ10代前半の小さな少女は恐る恐る振り返った。


そのナリにハイリアは絶句する。





──…紅い。





返り血が、ついて。



赤茶の髪は、更に紅く染まっていた。






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