ブルービースト
「リシ、ア…」


「は、ハイリア…」



固まったハイリアにリシアは縮こまる。


怒られるとでも思っているのだろう、罰が悪そうに彼を見上げた。



しかしハイリアは無言のまま不意に彼女の手を掴み、踵を返して走り出す。



「え、ハイリア!?ちょっとちょっとちょっと…っ!」


「うるさい!黙って来い!!」


聞いたことのない厳しい声にリシアは黙り込んだ。



──…怒ってる。



そりゃそうか、とため息をつきリシアはただ足だけを動かした。



ハイリアの結った髪に血がついているのを見て、少し眉を下げる。


加えて怪我をした彼に全力疾走させていることに、酷く悔しさを感じた。






「…っ!」


「あっ、ハイリア!!」



そして、怪我を心配した矢先にガクンと崩れ落ちる彼。



リシアが手当てしたあの怪我に手を宛て、歯を食いしばっていた。




「大変っ…!治療しなきゃ、」


「馬鹿!」


立ち止まって腰につけたポーチを探った瞬間、腕を引かれて彼に抱き締められた。


さっきまでリシアがいたところに銃弾が飛んでくる。






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