ブルービースト
気付けば、周りを包囲されていた。


それも当然。


手負いの兵士とその兵士に守られる小さな少女など、敵の格好の餌食となるに決まっている。



「ちっ…」


舌打ちしたハイリアはリシアを庇いながら両手を挙げた。



──…降参の、ポーズ。



彼にしがみつきながら、リシアも同じようにそれを示す。



「貴様、名を何と言う?」


敵兵の一人が銃口を向けながら訊いてきた。


「…ハイリア」


「フルネームだ」


「…ハイリア=シュバルツ」


「本当だな?」


敵兵はリシアにも目を向ける。


頷いた少女にふんと鼻を鳴らし、難いのでかい男はしゃがんでリシアをじろじろ見た。



「……上玉。連れ帰るか」


「えっ…?」



信じられない言葉に醒目するリシア。


ハイリアは咄嗟に彼女を腕の中に入れ渡すまいとした。


敵兵はそれを見てせせら笑う。


最も、笑っているのは一番偉そうなリシアを連れ帰ると言った男だけだが。



「降参したんだろう?殺されないだけましだと思いな」


「…リシアは渡さない」


「死にたいのか?」


「……リシアを渡すくらいなら…、」





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