ブルービースト
「こうするよ」


ハイリアはそうきっぱり言うと、その男の膝裏に蹴りをかました。


がくんと崩れるそいつの鳩尾に重いパンチを入れると、リシアを引っ張って走り出す。


後ろから銃声やら叫び声やらが聞こえ、リシアは怖くなってギュッと目を瞑った。




「…リシア、目を閉じるな。前を見て走って」


「で、でもこわいっ…」


「大丈夫、君は死なせないから」



宥めるように囁き、尚も走るハイリア。


彼はゆっくり瞼を押し上げたリシアを確認すると、彼女を自分の前に押し出した。


ちょうどそこは茂みの中。



いきなり押されて地面とこんにちはしたリシアは、膝を擦りむいたが気にせず体を起こす。




「ハイリア!」


「黙って隠れて!」


「やだっリア…!」



叫んでリシアは身を隠す草むらから出ようとした。


しかしその瞬間、目に入ってきた光景に青ざめしゃがみこむ。




「リアっ…!」


リシアを後ろに庇うハイリアの背中には、銃弾を受けた傷が無数にあった。


きっと先程走っていた間に後ろから発砲されたものだろう。


ドクドク流れる大好きな彼の血に、リシアは自分の血の気が失せるのを感じた。





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