ブルービースト

* * *


夕暮れ時。


ブロードやユノ、ポチが花見をした公園。

そこの外れに、静寂に包まれたこの場所はあった。





「……ポチ、終わった?」


「くぅん」



ある墓石の前でしゃがみこみ手を合わせていたブロードは、隣で器用に前足を合わせる飼い犬に話しかける。


ポチは頷くとブロードの足にすりより、お座りをして彼を見上げた。




「…リシアが掃除もしたみたいだね。すごくきれい」


「きゅん」


「……ハイリア…」



墓石を撫でる。


刻まれた名前は『ハイリア=シュバルツ』。



そう、ここはリシアの元カレでありブロードの親友、ハイリアの墓だった。




「お供えなくてごめんな。バナナあげてきちゃってさ」


あ、焼け焦げた魚がよかった?などと少し冗談を言ってから、ブロードはふぅと溜め息をついた。


立ち上がって服を叩くとよし、と呟く。



「墓参りも全部終わったし。帰ろっか、ポチ」


「わんっ」



吠えるポチ。


しかしそれはブロードに対しての返事ではなかった。



ポチが向く方向──墓場の入口に目を向けたブロードは、目を見開いて口をぽかんと開ける。






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