ブルービースト
「…おや、久しぶりだねブロード君」
コロコロコロ、と車輪の転がる音。
車椅子に乗ったその人は、ブロードを見つけると柔らかく笑った。
「………王様…」
呟いたブロードは慌てて敬礼する。
“王様”──つまりこのルビアニス国の国王。
彼は正真正銘その人であった。
印象は白髪に白い髭の優しそうなおじいさん。
その人は車椅子を自力で進め、こちらに向かって来ていた。
「…馬鹿息子の墓参りに来てね。まさか君に会えるとは思っていなかったよ。三年ぶりかい?」
「……はい。お久しぶりです」
隣に並んだ国王に、ブロードは少し笑みを浮かべ答える。
国王は挨拶だと近寄ってきたポチを抱き上げ、膝の上にのせ背中を撫でた。
「ポチも久しぶりだね。元気そうで何よりだ」
「きゅん」
「王様は…体調はどうですか?」
戯れる一人と一匹を眺めながら、ブロードは静かに訊く。
国王は顔を上げると目元に皺をよせ笑った。
「ご覧の通り。この年で悪いのが足だけなのは誇りだ」
「よかったです。これからもその誇り、大事にしてください」
「あぁ、もちろんだよ」