ブルービースト
にこにこしながら答えた国王は、静かに手を合わせる。
ブロードは邪魔をしないようポチを抱き上げ、黙ってそれを見守った。
しばらくしてから顔を上げた国王は、花を供えるとブロードを見上げる。
「…お一人で来たんですか?」
「いいや。墓地の外にキィルがおるよ」
「……………………。」
──…キィル。
その名を聞いたブロードは、思わず一瞬息を詰まらせた。
しかし国王は気付かず、笑顔で話を続ける。
「聞いておるよ。毎週ごちそうになっているんだろう?」
「……はい」
「あそこの奥さんの料理は絶品だろう」
「……はい、おいしいです」
そう答えてブロードはふっと笑った。
擦り寄ってきたポチを撫でると、囁くように言う。
「あそこの家族はあったかいです。すごく…」
「そうだろうね。私も何回かお世話になったが…家族が皆幸せそうだ」
楽しそうに笑う国王に、ブロードも目を細めた。
その腕の中でポチが今度は手を舐める。
──…まるで慰めるかのように。