ブルービースト
訊ねた国王は、ブロードの左手首をとってそこにある傷をなぞった。


ぴく、と震えたブロードは一瞬体を強張らせる。


それに気付いた国王は、すぐに手を離してくれた。


それから心配そうにブロードの顔を覗き込む。



「…まさかまだ痛むのかい?」


「…いえ、大丈夫です。ちょっと…ビックリしただけで」


「そうか。ならいいが…。副作用はなかったと聞くが、本当かい?」


「……はい、大丈夫でした」



墓に供えられた花を見つめながら、ブロードは頷いて言った。


さっきからドクドクと心臓の動きが速くなっている。




──…逃げたい。この場から。




国王の顔を、真っ直ぐ見れない。






「………おや?」



不意に国王が墓場の入口に目を向けた。


つられてブロードもバッと顔を上げる。



そこに見慣れた人影を見た青年は、思わず安堵の息を吐きそうになった。




「あれは…」


「僕の部隊の隊員です」


「……あぁ、あの元医療班の子と…第三から移転した子か」


「………よくお覚えですね」


「なに、第一部隊は少人数だしアサギ君から話を聞くからね」



優しく微笑んだ老人はやって来る二人を眺める。


第一は美人さんが多いね、などとぼやく彼にブロードは苦笑した。



確かに美人だが正体はストーカーと鬼だ。






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