ブルービースト
「……うん。王様と話してた」


一回俯いたブロードは、次には笑顔で顔を上げ言葉を発した。


ユノはピクリと眉を潜める。




キィル=ルヴァイテ。



軍の中で名を知らぬ者はいないだろうと言われる、孤高の軍人として有名な男性。


彼は軍の統帥とする国王の次に地位の高い、元帥の肩書きを持っている。



そんな上司にタメ口。


──…アサギにすら敬語を使っているのに、おかしい。






「さっきな、お前の家族の話をしていたんだ」


「ほう?私の??」


「奥さんの料理が絶品だとな。ブロード君もお前の家族はあったかい、と言っておったよ」


「それは…嬉しい限りですね」



目を細め笑ったキィル元帥。


彼は背中で一つにくくった草色の髪を揺らし、ブロードの前に歩み寄った。


ポチが警戒するのも無視し、蒼い頭に手を乗せる。



「…お前もその家族の一員なんだから。遠慮はせずに何でも言いなさい」


「……………うん」


「よし。じゃあ国王、行きますよ。待ちくたびれました」


「苦ではありませんと言ったのは誰だったかな?」



国王はもう少し話したそうだったが、結局車椅子を元帥に押されしぶしぶ帰っていった。


また話そうなブロード君、と柔らかい笑みを残すのを忘れず。





< 145 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop