ブルービースト
鬼の補佐がいるというのにはっきり否定した中将さま。
しかしユノは何も言わなかった。
──…細められた蒼い目に、ただならぬ威圧感を感じてしまったから。
まるでこれ以上もう訊くな、とでも言うかのようなそれにリシアももう何も言えない。
そんな二人にも笑みを崩さず、ブロードはポチを撫でるとこう言った。
「俺、先に帰るね。疲れちゃった」
「あ、は、はいっ」
「二人は…ハイリアに用事、かな」
「はい。ユノさんを紹介しようって思って…」
「そっか。晩ごはんまでには帰っておいでよ、女の子だけは危ないから」
「はい、ありがとうございますっ」
ブロードに対する返事は、全てがリシアのもの。
中将は補佐が怒っているとでも思ったのか、苦笑すると「また後でね」と背を向けた。
その姿が墓地から消えてから、ユノとリシアは顔を見合わせはー、と息を吐く。
「なんかブロードさん怖かったかもぉ…」
「………うん…」
「ハイリアのこと、やっぱり怒ってるのかなぁ…?」
不安そうに呟くリシア。
相当後悔して気にしているらしい。
そりゃそうか、と納得しながらも、しかしユノは緩く首を振った。