ブルービースト
-Ⅲ-
小さな声で話をする、ユノとユイアの二人。
そんな母娘を微笑ましく見てから、ブロードは静かにその場を去った。
あとはあの親子の問題。
自分が聞く意味も、理由もないから。
「うまくいきますよーに」
小さく、呟く。
バレずに扉を閉めたブロードは、ふぅと息を吐くと看護師さんに挨拶をしてエレベーターに向かった。
そのまま一階に降りるのかと思えば、その細い長い指が押したのは4の文字。
4階でございます、そんな機械的な女性のアナウンスを聞きながら、
(どうしてエレベーターの声って女の人なんだろう)
とかどうでもいいことを考え足を踏み出した。
「えっと…」
何やらキョロキョロしてから、『東棟』とプレートに書かれた方へ進む。
その最奥まで行く手前で右に曲がり、突き当たりの病室でブロードは一度立ち止まった。
病室の入口に置いてある消毒液で、手を洗う。
「失礼しまーす…」
微かに断りを入れ、扉を開けた。
途端に目に入るのは、白、白、そして──たくさんの細い管。
「……アンリさん…」
ぽつり、と溢したブロードが見つめる先には、目を固く閉じた女性が。
管に繋がれたその人の横たわるベッドの横には、微笑むその人と“あの人”が入った写真立てが立てられていた。