ブルービースト
優しく微笑んだアサギは、くしゃりとブロードの頭を撫でた。


ちょっと色々と込み上げそうになったが、「ありがとうございます」とへらりと笑って何とか誤魔化す。



「じゃあ、そろそろ話終わってると思うし…俺は行きます」


「話?なんの…」


「ユノを連れてきたんです」



またまたお得意の笑みを浮かべて、ブロードはそっとアサギの手から逃れた。


ブロードの言葉に驚いたアサギは、目を丸くして彼を見る。



「ユノちゃん!?まさか…」


「はい、会わせてきました。ユイアさんが…会いたいって、言っていたので」


呆気にとられる大将にそう言うと、中将は失礼しますと断ってその場を離れた。


エレベーターに消えるその姿を見送りながら、アサギはふっと目を細める。



「毎回毎回…思い切ったことしてくれんな」


──…それが今まで多くの問題児を救ってきたのだが。



「そろそろ自分のことも許してやればいいのによ」



溜め息をついたアサギは、東棟に体を向け歩き出した。


病院の廊下で鼻歌なんぞ歌うから、お医者さんに注意されてしまったが。





「さてと…ユノちゃんはどう変わるかな」



楽しそうな呟きに、すれ違った看護師さんは首を傾げていた。





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