ブルービースト

* * *



「……知ってたんですか」



赤みのさした空の下。


帰り道、先頭を走り回りながら進むポチを眺め、ユノは涙声のまま隣を歩く上司に問いかけた。


無言のユノに合わせて黙っていたブロードは、ユノを見下ろすと眉を八の字に下げ苦笑する。



「うん。ごめんな」



ブロードがユイアの病室に戻ったとき、二人は泣きながらお互い謝るというはたから見たら奇妙な光景を作り出していた。


それとなく予想していたブロードが宥めるまで、ずっとそうしていたらしい。



「母さんが私を軍に売ったのは…病気だったからなんですね」


「…そうみたいだね」


「……私…捨てられたんだって…、父さんが亡くなってお金がなくなったから売ったんだって…勝手に思ってました」



どうやらユノが軍に入ったのは、母親が彼女を売ったかららしい。


ブロードは前からユイアに話を聞いて知っていたので、また涙目になってきたユノを複雑な気持ちで眺めていた。



けれど一つだけ言っておきたくて、口を開く。





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