ブルービースト
「…きっとユイアさんがあのままユノを育てようとしたら、彼女はもう亡くなってたよ」
「…………………。」
「…もう恨んでない?」
そう問いかけて顔を覗き込めば、ユノはこくんと頷いた。
安心したブロードは「そっか」とだけ返すと視線をポチに移す。
二人して犬を眺めながらゆっくり歩いて、犬はピョンピョン飛び跳ねて。
老人みたく穏やかだなぁなんてブロードが思っていると、ユノが小さく言った。
「……病気を治して、また二人で暮らしたかったって言われました」
その言葉に中将は蒼い目を見開く。
まるでもう駄目みたいな言い方。
ユイアの病気のこともその進行状態もよく知らないが、そんなに悪いのだろうか。
「…これからはユノがお見舞い行ってあげてよ。その方が治りやすいんじゃない?」
「なら仕事してください」
「うっ」
…痛いところを突かれた。
苦い顔をしたブロードにユノはくすりと笑った。
ありがとうございます、なんて言うもんだから、どこの口がそんなことをなんて思ってしまった。
それが顔に出ていたのか、ユノはジト目で睨んでくる。