ブルービースト
しかし、彼女の態度と発言はあの上司に向けられたものではなかった。
銃口が捉えたのは、──…レイツの額。
一瞬固まったレイツは、驚きに目を見開くとひきつり笑いをした。
「あれー!?ゆ、ユノちゃん?俺お気に召さないこと言ったか!?」
「…どうしてですか?」
「、あー…?」
──…空気が違う。
いつもなら「なんとなく」なんて理不尽なことをおっしゃるのに、…今回はおふざけなどではないらしい。
何せ彼女の顔はにっこり笑顔とは程遠い無表情。
しかもその後ろに今までにないどす黒オーラを背負っている。
そんないきなりのユノの行動に、レイツは内心かなり焦った。
何なんだ一体、この娘はいつも予測不可能なことをする。
今のやり取りに、これほどまでに怒る要素はあっただろうか。
とりあえず目を逸らしておいた副隊長。
ユノは彼を見下ろすと眉根を寄せる。
そしてその桜色の唇を、ゆっくり開いた。