ブルービースト
「何か知ったのか?」


「……別に何も…」


「じゃあ、何をされた?」



──…何故そんなことを訊くのか。


ユノは掴まれた手首を睨み、それから次にレイツを睨んだ。



そして、あの日以来誰にも言わなかったことを言う。




「お母さんに会わせてもらいました」


「…お母さん?ブロードのか?」


「いいえ。私のです」



 私を軍に売った、母に。



そう言えばレイツはその橙色の目を見張る。


手首を掴む力が緩んだが、ユノはそのままそれを振りほどこうとはしなかった。



きちんと向き合って、話して。


あの日母とそうしたように、


──…彼がそうさせてくれたように。




「悪かった…」


「…いいえ。大丈夫です」


「最近よく出掛けてるのはそれなんだな」


「はい。仲直り、しました」



反省したらしく気まずそうなレイツ。


そんな彼にユノは少し微笑んだ。


レイツも苦笑し、それから彼女の手をそっと包む。




「お前も救われたんだな」


「…はい」


「…それでもこの手で銃を握るのか?」


「はい」







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