ブルービースト
そりゃないぜ、とレイツは苦笑した。
冗談ですよ、そう笑ったクライドはもう寝ますと話を切り上げる。
「見張りお願いしますね」
「おぅ!さっきの話誰にも言うなよ!」
「はい。おやすみなさい」
可笑しそうに笑ったクライドも就寝した。
そうしてすっかり静まり返ったその場。
まだ第三の二人が帰ってきていないのに気付き、気まずくなるなとレイツはぼんやり思った。
それから頬をかき、呟く。
「複雑だなぁ…色々と」
どれもこれも簡単にいきそうにはない。
要はブロードだな、と彼の寝顔を眺めつつレイツは溜め息をついた。
「綺麗な寝顔しやがってよぉ」
ぷにぷにと頬をつつく。
柔らかいそれにコイツ本当に男かと少し疑わしくなった。
身動ぎしたブロードはレイツから顔を背ける。
「んん…ポチぃやめろぉ」
(…ポチだと思ってやがる)
めでたいなコイツは、とまた苦笑。
これがあの噂の“蒼き獣”だと、誰が思うだろうか。
「何もなかったらいいけどなぁ…」
先が思いやられる遠征に、副隊長はまたひっそりと溜め息をついたのだった。