ブルービースト

(それに、すぐにここに戻って来れるし…)



ここに逃げ込みたい訳じゃない。


ただ、戻る場所に人がいると安心する。



(別にブロードさんだからじゃないけど!)



誰もそんなことは言っていないのに一人赤くなったユノは、慌ててブロードの傍からアサギの傍に移動した。


すかさずくっついてきたクライドをどつく。



「じゃあなブロード、行ってくる」



むすっとしている中将に言い、アサギは剣を抜いた。

ブロードは「気をつけてくださいね」とだけ言うと、まだ拗ねているのかそっぽを向く。


苦笑したアサギはどこか嬉しそうに頷くと、颯爽とその場を去った。

ユノとレイツ、セリナとクライド、ラルフとダグラスも、それに続き炭田から姿を消す。







「……寂しいなー…」



さっきまで騒がしかった炭田を見渡し、ぽつりとブロードは呟いた。

その声が反響し、自身に返ってくる。


それが消えてから、壁に背を預け体育座りをした。



(リシアこんなに寂しかったのか…ちょっと悪いことしたなぁ)



思い出すのは三年前。

親友を亡くした、あの日。


彼女は洞窟で一人、仲間が──というより、ハイリアが帰ってくるのを待っていた。





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