ブルービースト
そして、そんな医療テントの外。
帰ってきて見張りをはじめたアサギは、樹にもたれ掛かり騒がしいそこを見てケラケラ笑った。
「相変わらずっていうか…アイツの周りは賑やかだなぁ」
「俺は諦めませんよ、ユノさんのこと」
全くもって文脈の繋がらない返事をしたのはクライドだ。
彼は包帯の巻かれた腕を庇いながら、アサギの隣に立ちテントの中を睨む。
「ああ、まぁ頑張れ」
「…ありがとうございます」
何だか暗に無理だとでも言うような口調。
それを感じ取った第二部隊副隊長は、ムッとして眉を寄せた。
それに気付いているのかいないのか、アサギは蒼を見つめたまま柔らかく口元を緩める。
「それにしても…本当に感覚掴みやがった」
「? 感覚?ブロード中将のことですか?」
「ああ」
感覚、とは戦いのだろうか。
視線の先からブロードの話だとはわかったが、その話の内容がよくわからずクライドは疑問に思う。
しかし訊いてもこの上司は答えてはくれないのだろう。
「…凄いですよね。恋敵だけど、あの強さには憧れます」
「素直だな」
「元からですよ。でも、どうしてあんなに強いんでしょうか」