ブルービースト
これでも自分は努力した方だ、と自負するクライドは、そう言って恋敵である上司を見た。
激怒する副隊長に追い掛け回されている彼。
あんなに馬鹿なのに(クライドは本気でそう思う)。
努力してやっと第二部隊副隊長の座を勝ち取った自分とは、彼の強さはあまりにも違いすぎる。
「…アイツの場合は努力でも生まれつきの才能でもなく、経験だな」
「経験?」
「ああ。お前らとは潜った死線の数が違う」
そう言われて、クライドはぱちくりと瞬きした。
ブロードと自分は確か二歳しか変わらない筈。
しかも自分の方が年上だ。
それなのにそんなことを言われても、納得出来ないというものだ。
「でも彼は21でしょう?」
「お前と変わらないよな」
「俺は23です。経験なら俺だって…」
「お前はいつ軍に入った?」
自分の言葉を遮ったアサギの質問に、クライドはまた余分に瞬きした。
唐突すぎるその問いに答えるべく記憶を呼び覚ます。
「えっと…17です」
「そうか。アイツはお前が入る4年前に来た」
「え?」
ハッと見上げると、苦い顔をした大将の精悍な顔。
彼はブロードを見る目を哀しげに細め、再度口を開いた。
そして紡がれたその言葉に、クライドは愕然とする。
「ブロードは11の時に、史上最年少で軍に入ったんだ」