ブルービースト
「シャオル=リーって知らないか?」
アサギがそう問えば、妄想の世界に飛び立っていた青年はバッと振り向いた。
その勢いに大将は少しばかりビビる。
苦笑しながらかけた言葉は、彼を現実に引き戻すには十分な威力だったらしい。
「シャオル?シャオル前元帥ですか!?」
「ああ、まぁそら知ってるわな」
「有名人じゃないですか!やっぱりユノさんの強さは本物なんですね!」
キラキラと目を輝かせるクライド。
感心するばかりで肝心なことに気付いていない彼に、アサギは溜め息をついた。
「頼むからユノちゃんの前でそんな話すんなよぉ?」
「え?何でですか!」
「お前だって知ってるだろ。五年前の事件」
「あ…」
一気に興奮が冷めたらしく、クライドは握りしめていた拳を解いた。
──…五年前の事件。
軍内部で知らぬ者はいないであろう、大打撃を受けた出来事。
主に当時の重鎮が被害を受けた、軍始まって以来の大事件だ。
「あの結果がこの若いヤツだらけの軍だからな…全く恐ろしい」
「アサギさんは大丈夫だったんですね」
「ん?おお。死に物狂いで守ってくれたのがいてな」