ブルービースト
「「……………………。」」
気まずい沈黙がその場に落ちる。
キィルはちらりとブロードを見やり、それからミノリに目を向けた。
反省はしているようだが、それでも不満そうな彼女。
彼女がこの軍のお偉いさんだったなんて、この姿からは想像も出来ない。
「…ミノリさん。軍から解放されたからと言って、浮かれすぎはよくありませんよ」
直球ストレートを投げつけると、老婦人は面白いくらいビクリと肩を震わせた。
恐る恐るキィルを見上げ、それから口を尖らせる。
「失礼ね。そういうところは変わっていないのだから」
「事実を言ったまでです」
表情を変えずそう言いながら、キィルは未だミノリの膝の上で眠りこける息子に手を伸ばした。
しかし抱えようとする前に、ミノリがそれを止める。
「待ちなさいキィル」
「…何ですか」
その至極真面目な声に、渋々手を引っ込めた。
自分を見上げる瞳は、出会った頃より強い光を宿して些か睨んでくる。
何となく今から話される内容がわかり、キィルは溜め息をつくとどうぞと先を促した。