ブルービースト
「この子の目は、治らないの?」
放たれたのはやっぱり予想していた疑問。
その責めるような視線から目を逸らすことなく、キィルは言葉を返した。
「治りません」
「貴方、元医療研究班でしょうに。何か方法はないの?」
「ありません。もう手遅れです」
きっぱり吐き捨てた元帥。
ミノリは眉を潜めると、ブロードの頭を撫でながら彼を更に睨み付けた。
「仮にも息子でしょう?何か出来ないかとは考えないのですか」
「考えてますよ」
あくまで単調に言い切るキィルに、ミノリは苛立ちを隠さない。
ブロードをのせていて出来ない貧乏ゆすりのかわりに、ふんと大きく鼻息を吐いてその元凶から目を逸らした。
その先に映したのは、二人がピリピリと嫌な空気を醸し出しているのにも関わらず、まだむにゃむにゃと惰眠を貪っている蒼。
「……気付かなかったのですか」
ぽつり、と囁いた言葉は小さすぎて聞こえない程だった。
しかしきっちりそれを拾い上げた元帥は、残念ながら、と返す。
「コイツはいつも、隠しますから」
「…それをわかっていて、どうして?」