ブルービースト

ミノリの言葉にキィルは僅かに眉根を寄せた。



――…どうして、だと?



もし彼女が元上司などではなければ、そう言って叱るのだが。




生憎、そこまでする程馬鹿ではないので、皮肉を返すだけに終わらせる。





「貴女に言われる筋合いはありません」


「…………………。」


「気付いていたのに放置した貴女よりは、ましなつもりですが」




…これでも、キィルは皮肉なつもり。



きっと彼を知らない人間が聞けば、言い方諸々激怒してしまうだろう。


けれどミノリはこれが彼の精一杯だと知っているので、何も言えない。



――…指摘された内容に、ともとれるが。





「これでも必死に探しているんですよ。ありとあらゆる所を」



治療法の、話だろうか。



そう呟いたキィルは、話は終わりですとブロードを抱き上げた。


背中に背負い直し、老婦人を見下ろす。




「あと、ミノリさん。人の色恋に水をさすのはよくありませんよ」


「…………………。」


「せっかくこの馬鹿息子がそういう感情を知りかけているのに、余計なことをしないで頂きたい」







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