ブルービースト
「……私は、お前の父のようには絶対にならない」
ぽつり、と小さく呟き、布団を握り締めた。
――…悔しい。
その、存在が。
自分は彼とは、違うのだ。
別に彼が間違っていたとは言わない。
言わない、けれど。
「……もっと、頼ればよいものを」
先の言葉を飲み込み、キィルはそれだけ囁いた。
穏やかな寝息に安心して、そっと蒼い髪をすく。
もう20歳を超えた大人だろうが、自分の中では息子は息子。
かわいいものはかわいいし、とても大切な存在なのだ。
…こんなこと、口が裂けても言えないが。
そんな風に考えながら、柔らかい感触に癒される。
そうしてキィルも、次第に微睡んでいった。
「……ラント…」
微睡みの中で呟いた、その名。
空気に溶けてなくなったそれに、気付くものは誰一人としていなかった。