ブルービースト
そっとその腕を取ってみる。
何かが見えたのは、左腕の手首。
長袖の服なのでそれを捲って見てみると、手首には白い線があった。
──…刃物で切ったような、細い傷痕。
それの様子からすると随分前のものみたいだが、気になるのは怪我をしたときに深かったらしいこと。
こんなところを戦闘中の敵に狙われることはまずない。
と、いうことは──…。
「…………リストカット…?」
まさか、とでも言うように小さく呟くユノ。
その呟きを聞いたポチが微かに揺れた。
──…それは肯定の意味なのか。
右腕も見たがそこには何もなかった。
ブロードの利き腕は右。
それに加えさっきの彼の呟き。
──…リストカットの可能性は大いにあり得る。
「嘘…」
愕然としながらブロードを見るユノ。
幸せそうに眠る彼だが、謎だらけなことに変わりはない。
またその謎が増えてしまった。
一体どれだけ秘密があるのか。