ブルービースト
気になるけど、これはさすがに訊けない。
下手をすれば彼にあるかもしれない心の傷を抉ることになる。
敵の命ですら守ろうとするブロードが、自分のそれを自ら断ち切ろうとしたなどと、ユノは信じたくなかった。
(…見たくなかった。)
──…こんなもの。
顔をしかめるユノをポチが不安そうに見る。
そのポチをブロードから奪い抱くと、ユノは立ち上がった。
彼がそうしたのかなどわからない。
彼がそうしたとして自分がどうしたいのかもわからない。
ただ、何かに苛立っていた。
それは彼に対してなのか、彼にこんなことをさせる原因に対してなのか。
それともわからないことだらけなことに対してなのか。
「…………あれ?」
ブロードから離れて、ユノはふと辺りを見回した。
季節は春。
そのせいかまだ少し肌寒い。
それなのに、ブロードがもたれていた自分の左の肩と二の腕、更に彼が抱いていたポチだけは暖かいというより熱かった。
不思議に思ったユノは自分のそこに触れると首を傾げる。