ブルービースト
桜が舞う中、歩く二人。
ブロードの腕の中のポチは、不安そうに主人とその補佐を見ていた。
毎年恒例の“この日”の“この場所”での花見。
──…それは、あの時からの決まり事。
「帰ったら寝よっと」
「…………………。」
「あれ、怒らないんだね」
「………今日だけですよ」
珍しくそう言うユノに、ブロードは変なの、と愉快そうに笑った。
その笑顔の裏に、どんな想いがどれだけ渦巻いているのか。
「おや、ブロード君お花見デートかい」
「あは、こんにちはー!」
「……誰ですかあのおじさん」
「犬の散歩仲間だよ」
──…とりあえず、彼は今日も謎でいっぱい。
それでも少し近付けたかな、と考えるユノは、自分の気持ちには気付けていなかったのだった。