ブルービースト
「はぁー、ややこしい。そういうの嫌いだぜ」
わしわしと頭を掻いてから、目覚ましの残骸が入ったビニール袋を持ちレイツは部屋を出た。
パタン、と虚しく鳴る扉。
そのまま廊下を歩き出したレイツは、一旦風呂場の前で足を止めて男湯の方を覗き見た。
…男湯、なのだがちょっと怪しいぞチャラ男。
中からは我が隊長と犬の声が聞こえる。
それが楽しそうなのを確認すると、レイツは満足そうに微笑んだ。
「ほんっとに、アサギさんが言う通りポチのおかげだな~」
…あれがいなかったらどうなることか。
そう付け足してまた歩き出し、レイツはゴミを捨てる為に階段を降りるべくフロアリビングへ。
そこにはむすっとしたユノと化粧に専念しているリシア、愛しい我が妹とマスク姿のクリスがいた。
後方の二人はあの騒音で起きたようだ。
ちなみにクリスは花粉症。
「お疲れさま、お兄ちゃん」
「おぅ。ちょっくら捨ててくるわ」
軽く言葉を交わし、フロアリビングも出たレイツは階段を降りて行った。
世話の焼ける隊長だぜ、と心の中で嘆きながら。
その補佐の行動もかなり迷惑だ。
「これから忙しくなりそうだなぁ…」
チャラいくせに苦労人なレイツ。
そんな彼が本当に忙しくなるのは、あと少し後のこと。