上弦の月



「…ふざけんな、」


冷たい瞳で、水月があたしを見下ろす。



「俺は…お前をマリアだなんて思わない」




掴まれた手首から水月の怒りが伝わってくる。


水月の言葉が、あたしの胸を引き裂いていく。




「…どうして…?」






わかってるの。


自分が言っている事が、馬鹿げている事くらい。

…あたしじゃマリアの代わりにになんてなれないのに。



でも…


それなら、どうしたら貴方を救えるの?




「…水月に…泣いて欲しくないよ」


あたしは、どうすれば。




「あたしを、マリアだと思えば…少しは寂しくないでしょう…?」






語尾が少し震えた。


相変わらずあたしを見下ろす水月の瞳は冷たいけど、あたしは必死で見つめ返す。



「…ユリア、お前さ」






一瞬、水月の表情が哀しく歪んだ。




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