上弦の月
身代わり
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「お世話になりました」
看護婦さん達に頭を下げて、病院を後にした。
だいぶ弱ってしまった身体は、荷物を持つのも精一杯で。
あたしはのろのろと歩き出した。
「ユリア!」
不意に後ろから呼ぶ声。
「−−水月、」
振り返ると、水月が笑顔で走ってくる。
「迎えに来た!」
優しく微笑みながらあたしの荷物を手に取る。
「なんかごめんね‥?」
申し訳ない気持ちが込み上げる。
「お互い様だろ、な?」
そう言いながら、水月は歩き出した。
あたしは慌てて水月を追いかける。
「あー…ユリアの手料理食べたくなってきた」
不意に水月が振り返る。
「…うん、作るよ。とびきり美味しいの」
水月は目を細めてあたしを見つめた。
どうしようもなく、胸が締め付けられる。
「…よし。スーパー寄ってくか」
−−水月の声で我に返り、あたしは疲れやすくなってしまった身体で歩き始めた。