上弦の月
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「沢山買っちゃったね?」
スーパーでの買い物を終えて、あたしの家の玄関に辿り着いた。
「すげー美味いの期待してっから」
透き通るように綺麗なブラウンの髪をかきあげて水月が笑う。
その笑顔から思わず目を逸らして鍵を探すフリをした。
ガチャッとドアを開いて中に踏み込む。
「ただいま、…」
当たり前のように口からこぼれてきた、
『ただいま』。
前と何も変わりのない部屋。
脱ぎっぱなしの白いワンピース。
玄関に転がるリボンの飾りがついたミュール。
「−−ほんと、散らかすんだから」
いつもあたしに片付けさせてさ。
「靴くらい、ちゃんと−−」
悪戯っ子みたいな顔して、ごめんごめん、って。
「−−…っ」
いつもみたいに笑いながら、
弾けるような愛くるしい笑顔で−−
「−−マリア…っ!!」