上弦の月



身体が少しずつ体温を取り戻していく。


水月の瞳を真っ直ぐに見つめた。




「−−あたしの事、身代わりにして」


水月の顔が、戸惑いを浮かべ微かに歪む。





「…どういう意味?」




「そのままの意味だよ」



変に高鳴る鼓動を静めるように、あたしは息を深く吸い込んだ。



「あたしをマリアだと思っても、いいよ」



水月の瞳が揺れる。


困惑したように、前髪をかきあげた。






「俺が、お前をマリアだと思う…?」


水月は何故か自嘲的に笑った。




「−−ははっ」




冷たい声に、背筋がびくっと震える。



「だって、」







−−マリアを愛してたんでしょう?







そう続けようとした瞬間。






−−水月が、勢いよくあたしの手首を掴み床の上に組み敷いた。



「や…、水月−−」





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