1億の☆
(………)
扉を通り抜けると、磨き上げられた床が広がる大きなホール。
高い天井からはキラキラと輝くシャンデリアが光を降らす。
正面には大きな扉があり、その両サイドには幅広の階段が弧を描いて2階へ伸びていた。
目の前に広がる非現実的な、
本に出てくるお城のようなその空間に、
ただただ呆然と立ち尽くす。
「そんなにこの家が珍しいか?」
低く、よく通るその声で我に返り、
声のした方向へ目をやる。
声の主は2階の廊下の手すりに片肘をつき、
足を交差させてこちらを見ていた。
逆光でよく見えないが、
声色や体格からして、男性であることは間違いないだろう。