1億の☆
「それにしても、お前はラッキーだよなぁ。」
私の腰ぐらいの高さから天井近くまである大きな窓へ向かいながら藤堂類が言った。
(・・・・・・・・ラッキー??)
その言葉の意図がわからず、私は顔をしかめる。
「・・・・どういう意味??」
「だってそうだろ?
親が借金抱えたおかげで俺と結婚できて、
いままでよりもいい暮らしができんだから。」
(・・・・・・(怒))
窓にたどり着き、振り向いた得意気な顔に怒りが湧いた。
窓枠に体を預け少し気だるそうにこちらを見る姿が私をイラつかせる。
怒鳴り散らしたいとかじゃなく、そんなのをすっ飛ばして、
冷徹な冷めた感情が自分を支配していく。
コイツの言ってることは世間一般から見たら正しいのかもしれない。
今回の話がなかったらどうなっていたか考えるだけで寒気がする。
けれど、今の私が『ラッキー』なわけがない。
『ラッキー』=『幸せ』であっていいわけがない。
肉親に借金の代わりにされたんだよ?
全然知らないところに1人でお嫁に行くんだよ?
それのどこが幸せなの?
たとえこんな無神経な俺様なヤツにだって、そんなこと言われたくなかった。