1億の☆
藤堂類が口を開きかけた。
それを見て全身が震えだし、もう一度唇を噛み締めて言葉を待った。
「申し訳ありませんが、よろしいでしょうか?」
声はヤツからではなく、車の運転席から発せられた。
「西條、どうした?」
言葉を発したのは紛れなく運転中の西條さんで、
藤堂類は今までの事がなんでもなかったかのように前を向いた。
自分から目を逸らされ安堵した。
時間にしてみればものの5分程度なのだが、とてつもなく長い時間に感じていたから。