奪ったのは君か僕か
ちょうどその時期に奥見屋の主人から
うちの娘に縁談を、と頼まれた。


奥見屋は有名な呉服屋だ。


娘も美しい。


これは、


これだ!と思った。


私は奥見屋に「何とかしよう」といい
数日後、紅葉の婚約者に縁談を持ちか
けた。


許婚は一瞬悲しいような困ったような
顔をして、静かに「お受けします。」
と答えた。


ただの農民に有名な呉服屋の娘。
こんな話、あり得ないのだ。


婿になり、呉服屋の後を継いで、
自分は一生お金に困らず過ごしていける。


この縁談を断る理由がない。


ふん、紅葉というものがありながら
所詮、金なのか。
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