奪ったのは君か僕か
俺は走った。


河原まで、全力で。


紅葉…


「っ…はぁ…、」


「栄蔵さん!」


「はぁ、はっ…紅葉!」


「こんなに走って…どうしたの?」


「どうしたのじゃねぇ!…親父さんから
 話は聞いた…江戸城に、行くんだって
 な。」


「…私は…ッ!行きたくなんか
 ないんです!!!」


「なら、どうして!?」


「それが家のためなんです…
 今年は不作で、ほとんど家に貯えが
 ありません。母の薬を買うことすら
 できないんです…。私さえ、私さえ
 我慢すればそれでいいのです。」


「紅葉…私はお前を愛しているんだ…!」


「私もです!栄蔵さん!」
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