天国の妻へ、俺たちは元気です



とは言っても、毎日のように妻の姿は俺の脳裏に浮かんでくる。



しぐれが死んでから、どれくらいたっただろうか。



あれば春頃、雨が降る日だったか。



車で買い物に出かけようとするしぐれに、俺はなんとなくこう言った。



「今日は俺が買い物行くか?」



しぐれは少しだけ驚いた様子で



「珍しいわね、何かあったの?」



と、答えた。



「いや、なんとなくだけど……」



「あなた、何買うか分かってる?」



「…………」



何も言えなくなった俺に、しぐれは微笑んだ。



「ふふっ!ありがとう!お留守番よろしくね」



っと、買い物に出かけた。



最後の会話だった。



妻、しぐれは、スピードを出しすぎ濡れた路面にスリップした大型トラックに衝突され、この世を去った。


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