ラスト プリンス
明日にでもファイルでまとめるか。優先にするデザインの順に。
……うわ。嫌なもん見つけちまったな。
『ブーケのデザインはこれでいいから、合うような花見つけてねぇ』
頼まれてたのすっかり忘れてたな。 っていうか、どうやって見つければいいんだよ。
カイの言葉を反芻しながら、パソコンの画面に[ブーケ用の花選び]とポストイット。
明日だ、明日。
「カイ。終わりそうか?」
「絶対無理」
「じゃあ、お持ち帰りな。明日忘れるなよ」
仕方ねぇから、いつもなら梨海がやる軽い掃除や洗い物をやる。
後ろで、うわ、雨が降るなんて言ってるやつのマグカップだけ、洗わずに放置。
洗ってよー、なんて、聞こえない、聞こえない。
むしろ、洗わないでよー、って聞こえるよな。 お笑い芸人の鉄則『押すな=押せ』みたいな感じで。
だいたいの仕事を終わらせた俺は、いまだ、ソファーで気持ち良く眠る梨海に近づいた。
時間的にも家の人が心配するだろうに、こいつの携帯はうんともすんとも言わない。
もしかしたらサイレントか、とも思ったけど、確かこの前鳴った時はバイブレータに設定してあったはずた。
梨海の携帯は相変わらずこのテーブルに置いてある。
それを上から数秒間見ていても、どこかが光るなんてこともない。
電源が切れてるのか、と無理やり納得した俺は、梨海を起こそうと手を伸ばした。