ラスト プリンス
「にやけるな。 気持ち悪い」
「はいはい」
「………殴りてぇ」
「女の子に手を上げるつもり……ん?」
流れるように耕太に目を向ければ、一枚の紙片手にパソコンとにらめっこをしていた。
別に、それは引っ掛からないんだけどね。 その、耕太が持っている紙に書いてある……。
「それ、ブーケ?」
着色してあるブーケのデザインは、可愛くて投げるのが勿体ないくらい。
「そう。 この色にあった花探してんだけど、ダメだ。花すらよく分かんねぇにさ。 カイの野郎俺に回しやがった」
トンと紙をデスクに置き、天を仰ぐ耕太。
その紙を手に取り、イメージを膨らませる。 だいたいの想像が出来たところで、インターネットで最近生けた花の名前を検索。
「………勝手にいじるなよ」
キーボードを打つ音が聞こえたのか、こちらを見ずに言い捨てる耕太に「バーカ」と、真上から顔を覗いた。
「パソコン。見てみなさいよ」
「なんでだよ」
「ガーベラ」
「はあ?」
「このブーケでしょ? デザインからも花びらとかガーベラっぽいし。ガーベラならこの色あるから」
ゆっくりと起き上がってパソコンの画面をじっと見た耕太は、マグカップを口に運ぶ。