ラスト プリンス


 それから、「教えてっ」「教えない」を繰り返しているうちに、ケーキ屋さんに着き、ここもまたあたしが選び、その後BELLに到着。

 早まる気持ちを落ち着かせながら、社長室のドアを開いた。

「梨海ちゃんと耕太、おかえりー」

 軽く手を上げるカイさんはソファーに腰を下ろしていて、窓際には、漆黒で艶やかな黒髪を低い位置で結っている女性と栗色の髪の毛をアップにしてコンコルドで留めている女性が、こちらに背を向けている。

 彼女らはカイさんの声によって、ゆっくりと振り返った。

「………っ」

 漆黒の黒髪の女性は可愛らしく、その隣の女性は美しくて。

 息を呑むほどのツーショットに、少しの間、呼吸を忘れてしまいそう。

 あたしが今まで見てきた人の中で、ツートップかもしれない、と勝手に頭の中で順位の入れ替えが行われてる。

「香保里(かほり)さん。お久しぶりです」

「耕太くん、久しぶりね」

 カツカツカツ、と、ヒールの音を響かせながら敬語バージョンの耕太に近づくのは漆黒の黒髪の女性。


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