ラスト プリンス
この方は、香保里さんだってことは分かった。
ちょうど耕太の隣にいたあたしは、近づいてくる香保里さんから目が離せないでいる。
「あなたは……?」
耕太に微笑み、それからあたしへと視線を移した香保里さんは、かすかに首を傾けた。
一瞬、話し掛けられたことすら分からなかったあたしは、気付かれないように背筋を伸ばす。
「アルバイトをさせていただいてます。 七瀬梨海です」
「私は村上香保里 よろしくね」
ぺこっと小さく頭を下げたあたしは、香保里さんの奥へと視線をやった。
「コータ、コータ、コータ!!」
子どものような可愛らしい声とともに、いきおいよくジャンプして耕太に抱きついた栗色の髪の毛の女性。
「ちょっ……ユキっ。止めてください!」
この人が、ユキさんなんだ。
見た目とは裏腹に随分と子どもっぽい気がしなくもないけど……。
「ねぇねぇっ。あなた、梨海ちゃんっていうんでしょおっ?」
耕太に抱きついて興奮気味なユキさんが、今度はあたしに擦り寄ってくる。
「は、はい。七瀬梨海です」
びっくりしながらも、綺麗な肌だなあ、なんて考える。