ラスト プリンス
「ねぇ、耕太って呼んでもいい?」
「嫌だって言っても呼ぶ気なんですよね?」
「まあね。あたしのことは、梨海でいいから」
「そうですか。どうでもいいので、少し黙ってもらえますか?グロスのせるので」
なんかムカつくんだよね。
言い方とかそのバカにしたような笑顔とか。
買ってから一度しか使用していないペールピンクのリップグロスが唇をぷるんと魅力的にさせる。
魅力的かどうかはあたし次第なんだけど。
「さあ、出来ましたよ。どうです?」
「……全部、あたしのポーチに入ってた化粧品でやったの?」
「もちろん。ココにあるのをあなたに使うのは勿体ないですから」
鏡に映ったあたしは、いつものキツいメイクとは真逆の柔らかい感じに仕上がっていた。