ラスト プリンス


『ごめん。いきなり電話して。 このケー番友達のなんだ。 俺のじゃ出ないだろ?』

「当たり前じゃないですか。 要件を手短に伝えて下さい」

 ありえない。 ホント、男って何考えてるか分からないわ。

 まだ、鮮明に思い起こせるあの言葉を吐いた張本人だって言うのに、よくもまあ、電話してくるわね。

『俺と……会ってくれない?』

 唐突に、耳に刺さるんじゃないかってほどの衝撃に、一瞬、呼吸を忘れた。

「………は?」

『だから。 俺と会ってほしい』

 あたしが聞き漏らしたとでも思ったのか、このバカな先輩は、恥ずかしがるわけでもなく、照れくさそうでもなく、平然と言って退ける。

 そういう意味で聞き返したわけじゃないんだけど。

「聞こえてる。 っていうか、あんな酷いこと言い散らした癖に、意味不明。 あれだけ言うような女には、もう二度と会いたくないんじゃない?」

『謝りたいんだ。この前のこと』

「だったら、この場で謝罪すればいいじゃない。 電話の向こうで土下座して床に頭を擦り付けてなさいよ」

 もう、いい。
 あんたとなんか喋ってたくない。

 どんなに最低な女って思われてもいいから、早く、電話切りなさいよっ。


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