ラスト プリンス
『それじゃあ、梨海に見えないだろ?』
「別に。 会って謝られたほうが嫌」
お願いだから、と。
まるで、どこぞの夫婦の痴話喧嘩のように、お互い引き下がらない。
「あたしにメリットなんてないじゃない。 仮に会ったとしても、何もしないなんて言い切れるわけ?」
『約束する。 絶対』
「ウソよ。そんなの。 信じられるわけないじゃない」
あたしが信じるとでも思ってるの?、をふんだんに溶かした声音で告げる。
どうしても会いたい、なんて付き合ってた時に言わなくて、なんで今言うのよ。
こいつは絶対諦めない、もしかしたら教室にやってくるかもしれない、と悟ったあたしは。
「………いいわよ。5分だけなら」
結局折れたのはあたしだった。
時間と場所を指定し、一方的に電話を切って、机に突っ伏す。
謝られるだけなんでしょ?なら……、なんて考えたあたしが浅はかだったかは分からないけど。
自分の意思の弱さが頭にくる。
なんで断れないの?と、自問自答を繰り返してみるけど、答えは見つからない。
繰り返す度に、自己嫌悪に陥って、そこから出てこれないことにも、苛立って仕方なくて。