ラスト プリンス


「梨海ちゃん大丈夫? ため息ばっかりだけど……」

「大丈夫。ただ、憂鬱なだけだと思うから」

 一向に授業に集中出来なかったあたしは、待ち合わせ場所へと脚を運ぶ。

 途中まで優衣と一緒に歩く道は、いつもより急勾配になったんじゃないかって思うほど、脚が重い。

 バイバイ、と心配の色を滲ませた瞳を向ける優衣に微笑み、大丈夫だから、と頭を撫でた。

 待ち合わせ場所は、優衣の家から少し行ったところにあるファミレス。

 中に入ると、高校生がちらほらといて、その中からあいつを探す。

 あいつはすぐに見付かった。だって、じっとこちらに視線を投げているんだもの。

 店員さんに待ち合わせと伝え、ゆっくりとその席へと向かう。

「遅れてごめんなさい」

「俺が早かっただけだから」

 相変わらず、いたって平凡な顔に無理やりくっつけたような優しそうに見える笑顔を浮かべるわね。

 そう、と興味がなさそうな軽い返事を返す。

 しばらく沈黙が流れた後、それを破ったのは真司だった。

「この間はごめん」

 深々と頭を下げ謝る姿は、みっともないったらありゃしない、のに、頭を下げたまま上げようとしない。

「恥ずかしいから頭上げてよ」

 ざわついた店内に居心地悪さを感じながら、真司の肩を軽く叩く。

 でも、と何か言おうとした真司を遮って、渋々頭を上げてもらった。


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