ラスト プリンス


 しばらくはあのファミレスに行けないじゃないっ、なんて考える余裕もなく、バス停に一直線。

 浮気してたくせに、どんな神経してんのよっ。

 この前はじわりと期待が膨らんだけど、あれ、やっぱなし、って言いたくなるくらいムカムカするんだから。

 やっぱり、会うべきじゃなかったんだと、莫大な後悔で胸をいっぱいにしながら、闊歩する。

「……ちょっ!」

「………っ!」

 ガシッと強く腕が引っ張られ、強制的に振り返れば、若干息が上がってる真司が目の前に立っていた。

 ギッと睨み上げてから、腕を振りほどく。

「あんたなんか大嫌いっ!」

 「じゃあっ」と大きな声を出して、あたしの手首をことさら強く掴んだ。

「いっ………離してっ」

 痛さに顔を歪めるあたしなんて軽く流して、「俺が嫌いなんだろ?」と言葉を続ける。

「そうよ! あたしはあなたが嫌い。 だから、家に帰らせてっ」

「バスが来るまで、あと10分はある」

 ………確かにそうだけど。

「だからって、あなたと話す気にはならないわ」

 イライラにイライラが募って、わけが分からないくらいまで苛立っていれば、不意に真司の顔が近づいた。

 ………は?


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