ラスト プリンス
やっぱりあたしはツイてない
着物を着て息苦しかったクリスマスも終えて、お正月真っ只中の1月3日。
元旦と2日で親戚を回り終わったあたしは、今日、暇を持て余していた。
なんとなく、花に触りたい気分でもないし、だからといってお茶っていう感じでもない。
ザ・ヒマ。 と言った感じの暇な時間をゴロゴロと過ごしているときに、BELLからの着信があった。
電話の向こうではカイさんが『締め切りがっ』とか『ブーケの花がっ』なんて嘆いていて、その後ろで耕太は怒鳴っていた。
何かのコントを聞いているような、そんな微笑ましい光景。
それを見たくて、急いで上着を羽織り家を飛び出した。
社長室に入ると、ぐったりとしたカイさんに、どっからどう見ても不機嫌そうな耕太。
なるべくなら帰りたい、と思いつつも、「こんにちは」と恐る恐る声を出した。
「梨海ちゃーんっ」と声を上げたのはもちろんカイさんで、あたしは奥のデスクに歩み寄る。
途中、耕太をちらりと見たけれど、にこりともせずあたしを一瞥して再び手元に視線を落とした。
そんな耕太の態度に、心臓をぎゅっと鷲掴みにされたような、苦い痛みが走る。